みっか坊主日記 弐(2)

手裏剣(しゅりけん)道場の師範がつづる突発的ダイアリー<続編>

相田みつを美術館の話

相田みつをは、人生訓めいた詩と、技巧を捨てた書道を融合した芸術家です。
私は幼少より、足利市に住む親戚から届く「古印最中(こいんもなか)」を食べていたため、相田みつをがデザインした包装紙をとおして彼の詩や書にふれていました。
が、当時は、「和菓子屋の店主みずからが書いた……素人の字だろう」と思いこんでいました。

●さて、この松の内東京国際フォーラムの地下にある相田みつを美術館を拝観。
「さほど混んでおらず、ゆったり落ち着いた気分になれる穴場」と聞き、フラッと足を運びました。

相田みつをというと、「人間だもの」や「一生青春」などのフレーズが、まず頭に浮かびます。
何かをいっているようでいて……何もいっていないような……独特の簡潔さゆえに、サラッと受け入れられるあまたの名言は、カレンダーやポストカードになって今も人気です。

●彼がしたためたシンプルな文言は、長大な詩を下敷きにしているものが多いらしい。
また、古典の臨書にとり組んでいた初期作品は……その後の書とは似ても似つかない……整った楷書(かいしょ)がほとんど。
そういったエピソードを、今回はじめて知りました。

●私は書道でも、前衛より古典のほうが好きです。
でも、「トマトはメロンにならない」といった文句は、精緻な書体より、あの落書きのようなスタイルのほうが説得力あるでしょう。

●なお、一番心に残った作品は、「コマはよく回るほど静かだ」という内容のもの。
武芸の「平常心」とか「居つき」にも通じる警句です。
とはいえ、「やはり、止まったコマが一番静かだ」と、あえて反論しておきます。