みっか坊主日記 弐(2)

手裏剣(しゅりけん)道場の師範がつづる突発的ダイアリー<続編>

法華経寺のお花見

●千葉県市川市にある「中山法華経寺(なかやまほけきょうじ)」にいってきました。
法華経寺は、鎌倉時代の過激な僧侶・日蓮(にちれん)が最初に開いた大本山
日蓮宗への思い入れはないものの……「花見の名所としても有名」と聞き、妻と一緒に訪れた次第です。

●さて、参道の直売所では、根の小さい「葉ダイコン」と、手づくりイチゴジャムを購入。
農園のかたわらなどでよく見かける、無人販売所なみの低価格に感激しました。

●境内の桜はちょうど満開であり、法華経寺五重塔をバックに愛妻を記念撮影。
国宝の日蓮直筆「立正安国論(りっしょうあんこくろん)」などがおさめられている聖教殿では、私の写真を撮ってもらいました。
ちなみに、聖教殿はインド仏塔形式の建物で、設計者は築地本願寺をつくった伊東忠太です。
「こういうエキゾチックな建築が、はやった時代があったんだな」と得心。

●また、奥之院への移動中、手づくりパンのお店を発見しました。
そこで、イチゴジャムにあいそうな食パンをゲット。
最後の一斤を手に入れ、わが奥さんからは「でかしたのう!」とおほめの言葉を頂戴しました。

法華経寺から徒歩約5分にある「奥の院」はひっそりとしており、心もち空気も涼しかったです。
日蓮が「開宗後初の説法」をしたことを記した石碑などを見学しました。

●残念ながら、寺院周辺の飲食店はどこも行列ができており、食事は断念することに……。
そこで帰宅後、甘酸っぱいイチゴジャムをぬった食パンを堪能しました。
妻は焼いたパンにバターとジャムをとろかせ、「ぜいたく、ぜいたくじゃあ!」と大喜び。
おひたしにした葉ダイコンも、シャキシャキしていて実においしかったです。

●近年の桜は3月満開が当たり前ですが、今年は4月に春らんまん。
何だかいい気分です。

群馬霊場めぐり

群馬県中之条町(なかのじょうまち)にある嵩山(たけやま)にいってきました。
嵩山は古くから霊山として知られ、ハイキングコースには「経塚」「胎内くぐり」「弥勒穴」「不動岩」などと呼ばれるポイントが点在しています。

●奇岩や怪石を眺めたり、鎖をつたって登れたりする低山なので、「家族連れもアスレチック感覚で楽しめる初心者向けコース」と紹介されることが多いのですが、実は結構けわしいです。
雨後の鎖場などは、すべってたいへん危険でしょう。

●さて、私の奥さんは不動岩の鎖場で尻ごみし、「こんな危ない岩場を登っても、ただの自己満足にしかならんッス!」とベソをかきました。
私が根気づよくなだめすかして……何とか踏破。
すると妻は一転し、「ふむぅ。こんな大きな岩の上まで行ったのかぁ」と、しばし自己満足にひたっていました。

●その晩は東吾妻町(ひがしあがつままち)にあるお気に入りの温泉に投宿。
妻の筋肉痛がひどく、ひたすら彼女のマッサージにつとめました。

●翌日は、板倉町(いたくらまち)にある「雷電神社」を参拝。
雷電神社とはカミナリをはじめ、嵐や地震といった自然災害に関する神をまつる、関東ではポピュラーなおやしろです。
ここは関東一円の雷電神社総本山なので、チャンスがあればぜひ足をのばしたいと思っていました。

●門前の川魚料理店では、名物のなまずの天ぷらとたたき揚げをテイクアウト。
駐車場のすみでは……これといった案内板もなかったのですが……古今最強の力士とされる「雷電爲右エ門」の手形石を発見。
社務所で聞いたそのいわれは、少しあやふやだったものの、武芸関連の史跡にときめきました。

●桜の開花はまだでしたが、本当にいい陽気で春を満喫。
本年度も精進してまいります。

雑司ヶ谷鬼子母神堂散策

池袋駅は、毎週道場がよいで利用している都内屈指のターミナル駅
ただし、私は路線を乗り換えるだけであって、池袋の街にくり出すことはほとんどありません。

●その理由の一つが壮絶な人ごみです。
肩をぶつけ合って進む……あの人波は、なるべくなら遠慮したいもの。
しかし、駅から少し離れると、意外と閑静なエリアが広がっているのも事実です。

●駅から徒歩7、8分の雑司ヶ谷鬼子母神堂かいわいは戸建てが多く、実に落ちついた雰囲気。
「井戸から掘りだされた」という鬼子母神像をまつる「雑司ヶ谷鬼子母神堂」は、参拝みやげの「すすきみみずく」が有名です。
昨今は、境内にある江戸時代創業の駄菓子屋も注目を集めているとのこと。

●先日、妻とのデートで、久しぶりに鬼子母神堂をお参りしました。
参拝後、みみずくをあしらった「身体健全守」を彼女にプレゼント。
「かわいいですのう!」と、大喜びでした。
でも、たいてい……すぐになくしてしまうんだよなぁ。

●さて、そこから都電「鬼子母神前駅」の線路沿いを散策しました。
大収穫は、「日本酒屋」という酒屋の発見。
マンション2階の一室に店を構えており、何だかあやしいムードでしたが……お向かいの「大鳥神社御神酒」もあつかっているという超穴場でした。
私は、和歌山産の限定酒を購入。

●「購入者には蔵元の酒粕をつかみ取りでプレゼント」とのことで、思いがけぬ上物を頂戴しました。
灰色がかった市販品とはまるで別次元の芳醇な香りです。

●帰宅した後、妻に甘酒をこさえて献上。
「うみゃい。素朴でいいじょ!」と、大絶賛されました。
調子にのった私は、冷蔵庫にあった大根・山芋・キャベツを次つぎと漬けこみ、スーパーで半額だった石川県産のするめいかも粕漬にしました。

●ただ今、それらをつまみに晩酌中です。
うみゃい!

飯能ぶらり

●先日、埼玉県の飯能に行ってきました。
飯能は、旧幕府軍と新政府軍が衝突した「飯能戦争」で有名ですが、私は三島由紀夫の異色作「美しい星」の舞台としての思い入れが強い。

●今回の目的地は、飯能駅から徒歩30分くらいのところにある宮沢湖畔の「喜楽里別邸」という温泉でした。
ここのお湯はちょっと熱いのですけれど、湖から吹きつける寒風がほどよく体を冷ますので、結構長湯できます。
私は2時間ほど無心で湯につかりました。

●入浴後は、隣接するムーミンのテーマパーク「ムーミンバレーパーク」をのぞいてみようと散策へ……。
が、その日は湖畔でドッググッズマーケットが開かれており、おイヌづれで実にせわしなかったです。
ワンコたちが吠えあう中、早々に撤退。
なお、私は服を着せられたり、アタマにリボンをつけられたりした動物を見るとムシズが走ります。
あれは、何でだろうなぁ?

●ともあれ、ムーミン好きの妻のために、彼女が気に入りそうなハンカチを購入。
残念ながら、秩父特産の「しゃくしな漬け」は買いそびれました。

飯能駅の近くまで戻ったら、96年の歴史に幕を閉じるという「森田製麺所」を発見。
飯能には……分厚いゴムみたいな弾力のある……武蔵野うどんの有名店が多いので、「ひもかわうどん」を2玉購入しました。
また、その近所の酒屋でも地元の超限定酒を入手。

●道場がある東久留米から鉄道で30分程度のトコロながら、なかなかの一人旅を満喫しました。

下町そぞろ歩き

●2月に入り、さすがに雪も降りましたが……今冬は例年にくらべてあたたかです。
そこで、フラッと柴又(しばまた)の帝釈天(たいしゃくてん)まで足をのばしました。

●妻のお目当ては参道名物の草団子、私は酒のつまみになるようなつくだ煮や漬物がターゲット。
なお、人出はまぁまぁながら、外国人観光客は意外と少なめでした。

帝釈天の御神水は、タマゴっぽい香りのする鉱泉です。
一口飲んで、無病息災を祈願。
毎度購入に迷ってしまう「寅さんお守り」は、結局今回もパスしました。

●ちょうど昼時だったので、天ぷらの老舗「大和屋」に入店。
ここのタレは非常に甘く、ころもはスナック菓子のような軽さです。

●しかし、特筆すべきは、間口の広いレトロな店内。
年季の入ったのれん越しに外を眺めていると、通行人もしみじみとした風景になります。
ガラス張りの現代的な店構えにはないおもむきなのです。
こういう東京特有の……いい意味で……しみったれた情緒って、ずいぶん稀有になった気がします。

●時間があったため、日暮里で途中下車し、「谷中ぎんざ」も散策。
この商店街は総菜屋が人気であり、メンチやコロッケを買うのにも大行列に並ばなくてはなりません。

●行列ぎらいの私は、それを横目にずんずんと先へ進みました。
そして「塚腰」という肉屋さんの前を通りがかった時、3千円近くもする自家製コンビーフを妻にねだられました。
大散財です。

●あぁ。
コロッケの行列に並んでおけばよかったな。

年の瀬参拝の話

●先日、千葉県・香取神宮を訪れて松詣(まつもうで)をしました。
松詣とは、初詣の人ごみが苦手な私が恒例としている年末参拝のこと。

●帰省渋滞を避けるべく早朝に車で出発し、8時前には到着しました。
参道にならぶみやげ店はまだ開いておらず、拝殿までの境内ではすれ違う人もありません。
冷え込みが厳しかったけれど、その空気は清浄でした。

●さて今回は、天真正伝香取神道流(てんしんしょうでんかとりしんとうりゅう)の開祖である飯篠長威斎(いいざさちょういさい)の墓も見てきました。
もしかしたら以前に訪れているかもしれないのですが……こじんまりとした墓所のため、その記憶はあいまい。
で、改めてそのたたずまいをうかがい……その小ささというか……質実剛健さに、武人らしい奥ゆかしさを感じました。

●また、「北総の小江戸」と呼ばれる佐原(さわら)の町にも寄って、小野川沿いをブラブラと散策。
小野川周辺には米、酒、醤油をつくる老舗が多く、実測による日本地図を初めて作製した伊能忠敬の記念館もあります。
妻は、名物の佃煮や、玉絞め圧搾という伝統製法でつくられたゴマ油などを購入。
むろん、私は正月用の地酒を買いました。

●さらに銚子の犬吠埼九十九里浜の天然温泉へも回り、帰宅したのはレンタカー返却ギリギリの時間。
隣県ながら、やはり千葉は遠いなぁ。

●なお、犬吠埼の海岸で拾った平べったい砂岩は「銚子石」といって、かなり古い時代から砥石に使われていたそうです。
「折りをみて、その銚子石を荒砥に仕あげてみよう」と考えています。

夢二式ステンシル

●なんとも目まぐるしい一年でした。
で、本年最後の息抜きとして「ステンシルワークショップ」に参加。
高崎市美術館で開催中の「竹久夢二のすべて」展に関連した企画です。

●ステンシルとは、文字や模様を切抜いた型紙を使った染色技法や版画のこと。
本講座の主旨は、「画家であり、詩人でもあった才人・竹久夢二が考案した書体をベースに、年賀状用のステンシルを作る」というものでした。

竹久夢二ファンの大半は、乙女であります。
それゆえか、受講者の9割は女性でした。

竹久夢二は「ゴチック体」よりもやわらかみのある「明朝体」を好んだそうで、三角をとりいれた書体が得意だったとか。
「線を丸に置きかえたり、波線にしたりといった遊び心も、夢二式文字の魅力の一つだ」という話でした。

●私は、「迎春」のシンニョウを龍に見たてたデザインを考案。
一方、わが奥さんは、花柄を散らしたえらく細かい版をセッセとこさえていました。
彼女は目を血走らせて、「面倒くさい作業って熱中しちゃうよね」とつぶやいていましたが……まぁ、それなりに楽しかったのだろうと思います。

●完成した作品は、夫婦ともにかなりのクオリティ。
印刷屋さんで刷ってもらったかのような仕上がりでした。
「原始的なコピー技術」とされるステンシルですけれど、いやはやおそるべし。

●なお、年賀状を投函するまでには「あて名書き」というさらなる試練もあります。
つらいやなぁ。

●ともあれ、よいお年を。