みっか坊主日記 弐(2)

手裏剣(しゅりけん)道場の師範がつづる突発的ダイアリー<続編>

サビ身の話

f:id:kenbujyuku:20200605215955j:plain

●職場の知り合いが、引っ越しの際に出てきたという刀を見せてくれました。
長年放置していたそうで、残念ながら鯉口がまったく切れない状態でした。

しかし、白鞘には鎌倉期に活躍した刀匠の名が墨痕あざやかにしるされており、マユツバながらも私は大興奮。
 
●持ち主の許可を得て自宅へ持ち帰り、ゴムハンマーや小づちを駆使し、刃渡り20センチ強の短刀を何とか抜き出しました。
刀身はひどいサビでしたけれど、タオルで2時間ほど磨き続けたところ、鉄肌が観察できる程度にはキレイになりました。
 
地鉄(じがね)は、華麗というより素朴でスッキリとした印象。
ナカゴに刻まれた銘は……来派(らいは)のビッグネームにしてはリッパすぎるので……シロウトの私にもニセモノであろうことが察せられました。
その時代の刀工は無学だったのか、幼稚園児がクレヨンで書いたようなつたない字が多いのです。
 
●とはいえ、形は手ごろ。
重みを感じさせない、心地よいバランスです。
 
●実はこの知り合いの家には、同じようなサビ身があと2振もあるのだとか。
2尺以上の大刀もあると聞き、「何とももったいない話だ」と思いました。
 
●ただし、研ぎに出せば、べらぼうな出費となる。
むろん、和鉄は非常に高価であるがゆえ、ジャンクあつかいして売り飛ばしてもそこそこの値がつきます。
が、それではあまりにも忍びない。
 
●なまじ武士の魂だけに……他人ごとながら、そのあつかいには頭を抱えてしまいました。
あぁ、この手の刀って、結構ゴロゴロしているんだろうなぁ。
他人ごとながら、誠に無念であります。