みっか坊主日記 弐(2)

手裏剣(しゅりけん)道場の師範がつづる突発的ダイアリー<続編>

酒蔵映画館の話

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●現代俳句の立役者である金子兜太(かねことうた)氏のドキュメンタリーを、埼玉県深谷市にある深谷シネマで見てきました。
深谷シネマは、300年ほど続いた酒蔵を改築しためずらしいミニシアター。
以前より、ぜひいってみたいと思っていました。

●酒造跡地には雑貨店、古本屋、喫茶店、飲み屋などもあり、レトロな横丁を形成しています。
妻のおみやげに手づくりの忍者犬クリップや、格安の地場産ナスなどを購入。
近隣では、映画撮影もおこなわれていました。

●ところで20年近くも前の話になりますが、私は仕事の関係で金子氏とご一緒したことがあります。
せっかちなべらんめえ口調と、ひょうひょうとした機転が印象的な人物でしたけれど、それほどに著名なかたとは、つゆ知らず。
後日、テレビや雑誌で見かけてタマゲました。

●戦争体験者だった金子氏は、あらゆる「権力」に強い反感をいだいていた人です。
平和が当たり前となった昨今、常識ハズレの権利主張や、恥知らずな個人主義がまんえんしているきらいがあります。
が、それでも「そういう庶民の図々しさこそが平和を支える」と、金子氏は断言。
強烈なリベラリストでした。

●家元制などが残る権威的な古流武術を学びつつも、信条的にはリベラルな私。
感想としては……実に悩ましく、何ともいいがたい映画でした。
となり席のオバさんがまき散らすケイタイの音にイラつきつつも、平和とか自由のあり方を黙考した次第です。

●舞台挨拶に登場した監督の河邑厚徳(かわむらあつのり)氏は、筋金入りの金子兜太ファン。
「何はともあれ、彼の人となりをフィルムに残したかった」と語りました。
なるほど。
金子氏の遺作の一つ「おおかみに蛍が一つついていた」を読んでも、イマイチわからない私みたいな人には、作品よりも彼自身のキャラクターや言動のほうが、はるかに親しみやすいからなぁ。

●そういう意味では、たしかに貴重な映像でしょう。
同館では、今週いっぱいまで上映するそうです。