●わが愛車は、20年以上も前、妻がプレゼントしてくれた「ママチャリ」です。
古き良きロッド式ブレーキのチャリンコでして、価格は一般的な自転車の2~3倍くらいしました。
そのころの奥さんは……私にとても優しくて……最高級の軽快車をポンと買ってくれたのです。
●さて、電車賃もままならぬ貧乏役者だった往時の私は、その自転車にまたがって都内を縦横無尽に疾走。
ヒマさえあればキレイに磨きあげ、サビ一つ浮かぬように大切に使ってきました。
●ところが最近、後輪の歯車(スプロケット)の不調が続き、先日ついにこげなくなりました。
近所の自転車店に持っていったところ、「うわぁ、古い自転車だなぁ。ウチでは扱いかねます」と、にべもない返事。
●「不具合の原因だけでも調べてほしい」とお願いすると、「ヘタにさわると責任問題になるんですよ。ヨソへ行ってください」といい出す始末でした。
「ヘタにさわるようなシロウトが、自転車屋の看板をかかげるなっ!」
そう怒鳴りつけてやりたいところでしたけれど……そんなお店が4、5件も続くと、さすがに意気消沈。
●結局、自転車を購入したお店に連絡をとることにしました。
しかし、その店主は当時すでに相当なご年配だったので、「もう存命じゃないかも……」と、あきらめ半分でした。
ところが彼は、案に相違してピンピンしており、いまだに現役バリバリだったのです。
●自転車をざっとチェックすると、オヤジさんは二つ返事で修理を快諾。
「歯車は同じモンがないからさ、ちょっと小さいのと交換するよ。まぁ、坂道は辛くなるだろうけど、平らな道では今よりもスピードが出るだろう」
請求された修理代は、拍子抜けするほど安価でした。
●ボウズになっていたタイヤの交換や、欠けていたスポークの補完もサービス。
あっという間に、私の愛車は完全復活をとげました。
●片道1時間近くをかけて、自転車を運んだかいがありました。
ただし、「こういう機転がきく職人って、今後ますます身近から減るんだろうな」と考えさせられた次第。
●交換して不要になった古い歯車は「車手裏剣にならないだろうか?」という直感もあり、引きとらせてもらいました。
今度、道場で試打してみます。