みっか坊主日記 弐(2)

手裏剣(しゅりけん)道場の師範がつづる突発的ダイアリー<続編>

山梨のミュージアムめぐり

●ヒンヤリした冷泉といえば、山梨県を思い浮かべます。
においや色のない単純泉が多いため、山梨の温泉はインパクトに今一つ欠ける。
しかし、入るのはもちろん、飲んでよしの薬湯として昔から有名であり、特に夏場は低温で心地いいぬる湯が重宝します。
というワケで、今夏も山梨の名湯を巡遊。

●その途中、県内のミュージアムも見て回りました。
まず最初にたち寄ったのは、県立考古博物館です。
同博物館は、遺跡や古墳群が点在する曽根丘陵(そねきゅうりょう)公園内にあり、現在は「呪い(まじない)の世界」展を開催中。

●呪いというと、恨む相手を見えない力で害するといった悪いイメージが強いのですが……たいていのマジナイは、自分の幸運や家族の健康を祈るものです。
再生を願っておこなう「埋める」という習慣、意味を封印する「書く」という作業など、マジナイに通じる行為に分類してコンパクトに解説していました。

●なお、甲府城に飾られていた「金箔付き鬼瓦」は、邪を払うための風神もしくは雷神とおぼしきユーモラスな人形がはりついていて、実にキュートです。
九字護身法と呼ばれるドーマンも紹介されており、省略したドーマンは「♯」で書きあらわされることもお勉強。

学芸員によるギャラリートークも拝聴しました。
この学芸員さんは、展示品の発掘調査にもたずさわったとのこと。
「マジナイの痕跡があった現場で、イノシシが不可解なくらいに遺跡を荒らしていった」
「さらにその遺跡を調査中、体調を崩し、長期休業に入るスタッフが出て騒然となった」
といった、ホラーっぽいエピソードも披露してくれました。

●また、身延町の山中にある「木喰(もくじき)の里 微笑館(びしょうかん)」は、ずっと訪れたいと思っていた資料館です。
念願かなって観覧しました。
木喰は、木の実と草のみを食べる「木食戒」をしていた江戸時代の僧で、56歳という高齢になってから全国行脚を開始。
同じ廻国僧である円空がつくった仏像に感化されたらしく、木喰も生涯に何百体という仏像を彫りあげました。

●館内は「薬師如来画像軸」といった直筆の書画、木喰関係者に残された紙位牌や背負櫃などの資料がめじろ押し。
とはいえ、木喰の手による彫刻は一体だけしか展示されておらず、ちょっと拍子抜けしました。
ただし、俳優の滝田栄をほうふつとさせる大柄な管理人さんが親切かつ話ベタで、強く印象に残りました。

●それから山梨県立美術館にも足を運び、「富士山図」などで知られる富岡鉄斎(とみおかてっさい)の企画展も拝観。
鉄斎のドボドボとした筆致は感心しないものの……福禄寿をもじった「福禄酒」の書は、結構いい感じでした。

●それにしても、山梨はひじょうに暑い!
駐車場に止めた車のドアを開けた時の熱気といったら、もう、サウナ気分。
「夏の山梨では、のんびり冷泉につかるのが一番」というのが結論であります。