●長野県の善光寺は、「信仰を問わずに老若男女を救う」といわれる無宗派の古刹。
インド発・百済経由で渡ってきたとされるご本尊は、住職ですら見られない秘仏中の秘仏です。
その身代わりとしてつくられた「前立本尊(まえだちほんぞん)」が、ただ今公開中。
7年に一度の公開なのですが、コロナ禍で延長されたため、今回のご開帳も結構なにぎわいとのこと。
●さて、この善光寺は昔、山梨へ仮移転したことがあります。
合戦による焼失を危惧した武田信玄が、本尊や宝物をいったん自国に迎えて保護したためです。
40年後、同寺は長野に戻りましたけれど、最古の前立本尊と寺宝一部が山梨に残されました。
その山梨県にある「甲斐善光寺」でも、前立本尊を公開しています。
●連休中、久しぶりに甲斐善光寺を訪れました。
土日でなかったせいもあり、参拝客はまばら。
本家の善光寺よりも落ちついたこのムードが、私は好きです。
●ただし、せっかくのご開帳ながら、本尊とのご対面は今一つでした。
それよりも、宝物館に展示された源頼朝の座像のほうが興味津々。
●歴史の教科書では、神護寺三像の一つである「カクカクした黒い装束を着ている頼朝像」を紹介するのが、ずっとスタンダードでした。
が、昨今の研究だと、この肖像は足利尊氏の弟である直義(ただよし)である可能性が高いらしい。
それゆえ、最近の教科書では、甲斐善光寺に伝わる頼朝像を紹介することが多いそうです。
●ちなみに、足利直義は……直情的だった兄の尊氏とは真逆で……清濁併せ呑む器量人だったとか。
その一方、源頼朝は「ひねくれた小人物だった」との見方があります。
甲斐善光寺伝の頼朝座像は、まさにそのイメージどおり。
●ともあれ、甲斐善光寺には、日本一の規模をほこる「鳴き龍」や、地下の暗闇で極楽への錠前をさがす「お戒壇(かいだん)めぐり」といった見どころが盛りだくさんです。
ご開帳は、6月29日まで。